【徹底解説】マグカップやプレートの縁(ふち)にカラーリング!?陶器業界に伝わる「口線加工」について
OEM陶器の制作ならおまかせください。
今や誰でも簡単にオリジナルの陶器が作れるようになりました。
これは機械によるプリント技術の発達などが大きく関係しています。しかし、今もなお機械で再現できない陶器業界の伝統技法は少なくありません。
その中の1つがマグカップの縁(ふち)にカラーリングする「口線加工(くちせんかこう)」と呼ばれるものです。
街中ではよく見る加工でありながら、あまり知られていないこの技法。今回はそんな口線加工の方法や、表現について詳しくご紹介していきます。
個性あふれるオリジナル陶器の制作をお考えの方は、特に必見です。
陶器業界に伝わる「口線加工(くちせんかこう)」について
口線加工とは
口線加工とは、縁線加工(ふちせんかこう)とも呼ばれ、陶器のふちの部分だけに全体とは異なる色をのせる技法です。
陶器のふちとは、マグカップでいうと飲み口に当たる部分。平たいお皿なら、一番外側の部分がふちに当たります。
口線加工は、ふちの部分だけに色を付けることができる技法です。
つまり白いマグカップの飲み口部分だけを黒くしたりすることができます。よく見るのが、白地でふちに金色の加工がほどこされたプレートやマグカップです。こういった陶器は、口線加工によって作られています。
ちなみに口線加工は、古くから日本に伝わる伝統的な技法の1つです。口線加工で表現される模様は、機械では再現できません。
陶器のふちに筆を当て、ろくろを回しながら手作業で線を引くというのが口線加工のやり方です。
陶器へのプリント技術が発達した今でも、口線加工は手作業でしか行なわれていません。職人の腕が光る伝統技法といえます。
口線加工には2種類の方法がある
口線加工には、2種類の方法があります。
1つは上絵付(うわえつけ)という方法です。上絵付での口線加工は、完成した状態の陶器に線を引きます。
陶器には素焼き、施釉、本焼きという制作過程があります。上絵付で口線加工をする場合、これらすべてを終えた完成形の陶器に絵付を行ないます。
つまり釉薬をかけた陶器の上から、専用の絵の具もしくは金液を塗るという方法です。その後、約780~800℃の窯で仕上げの焼き上げを行ないます。
ここで用いる絵の具は、800℃前後でもしっかりと発色する絵の具です。
これに対し、もう1つの方法が下絵付(したえつけ)という方法です。素焼きを終え、釉薬をかける前の陶器に絵付を行ないます。
この際使用するのは、「呉須(ごす)」と呼ばれる絵の具です。そして呉須で線を引いた後、陶器に釉薬をかけます。この時の釉薬は透明のものを使うのが一般的です。
釉薬にはカラフルなものが多数ありますが、色のついた釉薬だとせっかく下絵付で引いた口線の上に色釉薬が乗ってしまい、口線が見えなくなってしまうからです。その後約1,200℃の窯で本焼きを行ない、完成です。
下絵付で口線加工をすると、釉薬が引いた線をコーティングしてくれます。そのため、口線加工でほどこしたふちの線が取れにくいのが特徴です。食洗器などに入れても、長く使っても釉薬自体が剥がれ落ちない限り、ふちの線が薄れたり消えてしまうことはありません。
また、下絵付にはもう1つの方法があります。それはふちの柄を境に、内側と外側の色が異なる陶器を作りたい場合に用いられる方法です。
この場合、呉須に油性の撥水剤を混ぜて口線加工を行ないます。これにより後からかけられた釉薬がはじかれるのです。口線加工した線を境に釉薬がはじかれることで、2色が線を侵食することなくくっきりと色分けできます。
ちなみに、金色の柄をつけるのに用いる金液はその性質上、1,200℃の窯に入れると焼け飛んでしまいます。そのため、すでに完成した陶器に絵付をする「上絵付」でしか口線加工をすることができません。
口線加工の方法とは?
では口線加工の方法を、さらに詳しく見ていきましょう。先ほどご紹介した「上絵付」と「下絵付」の2種類に分けて制作手順をご紹介します。
上絵付による口線加工の方法
上絵付で口線加工をする場合、手順は以下の通りです。
①成形
②素焼き
③施釉
④本焼き
⑤上絵付による口線加工
⑥焼き上げ
①~④までは、一般的な陶器を制作する工程です。
800℃前後で素焼きした陶器に、釉薬をかけます。その後1,200℃前後の窯で本焼きを行い、無地の陶器の完成です。上絵付による口線加工は、この後に絵付を行ないます。
焼きあがった陶器をろくろの上に置き、専用の絵の具や金液を用意します。筆に絵の具もしくは金液を付け、模様を付けたい部分に筆を当てながらろくろを回すという方法です。
線を引く手は動かさないのがポイント。ろくろの回転によって、綺麗な線が引かれていきます。
そして絵付が完了したら、仕上げの焼き上げです。このときもまた、素焼きと同様に800℃前後の窯で焼き上げを行ないます。
これにより絵の具や金液が陶器本体に定着し、上絵付による口線加工を施した陶器の完成です。
下絵付けによる口線加工の方法
一方、下絵付による口線加工の方法は以下の通りです。
①成形
②素焼き
③下絵付による口線加工
④施釉
⑤本焼き
②までは、一般的な陶器と同じ制作手順です。本来であれば、この後に釉薬をかける工程があります。
しかし下絵付で口線加工を施す場合、釉薬をかける前に絵付を行ないます。絵付に用いるのは呉須という絵の具です。また、釉薬をはじかせたい場合は呉須に油性の撥水剤を混ぜて使用します。
口線加工の方法は上絵付と同様です。素焼きを終えた陶器をろくろの上に配置し、呉須を筆に取ります。そして線を引きたい場所に筆を当て、ろくろを回すという方法です。
こうして陶器に線が引けたら、釉薬を上からかけていきます。釉薬は透明なものから色のついているものまで、バリエーションが豊富です。しかし下絵付で口線加工をする場合は透明の釉薬を使うか、撥水剤を混ぜた呉須で釉薬をはじかせることで線が消えずに仕上がります。
釉薬をかけたら、最後に本焼きです。本焼きは1,200℃前後の窯で行ないます。これにより釉薬が固まって定着し、下絵付による口線加工を施した陶器の完成です。
口線加工を使って表現できるもの
カップの口元やプレートの縁をオシャレに色付け
口線加工を使うことで、よりオリジナリティのあふれる陶器を制作することができます。例えばマグカップの口元だけに色を付けるなど。
ちなみに口線加工は、職人の確かな技術が求められる技法です。そのため、職人のいる本格的な陶器屋でなければ表現できません。陶器における質の高さや、珍しいデザインを追い求める方にはもってこいの技法といえるでしょう。
また、口線加工は色のバリエーションも豊富です。パステルな色合いから鮮やかな色合いまで、繊細に表現することができます。
ただ、残念ながら陶器そのもので表現が苦手な色はあります。例えば非常に明るいマゼンタなど、ビビッドな色は苦手です。これは800~1,200℃という高温で発色する無機顔料では表現できないからです。
こうしたビビッドな色以外であれば、専用の絵の具や呉須を用いてオリジナルデザインを作ることが可能です。
金やプラチナで口線加工も?
贈り物などでよく使われる金縁の食器にも、口線加工が用いられています。これはマグカップやプレートに限らず、さまざまな陶器に応用可能です。
例えば湯呑のような形の陶器でも、口線加工を利用すれば金色で縁取ることができます。金が施された陶器には高級感があり、見た目にも美しいのが特徴です。
また、高級感を演出するのは金だけではありません。銀色の線を引く際には、プラチナを用いることもできます。
一般的に銀線を引く際は、プラチナやパラジウムといった素材を使用します。銀線の引かれた陶器は、金とはまた違ったシックな高級感が特徴です。
お皿の内側に線を引いてよりこだわった仕上がりに
口線加工は、ろくろを回しながら線を引く技法です。そのため、筆を当てる場所によっては様々なパターンの柄を表現することができます。
例えば、ふちから数センチ下がったマグカップの内側に綺麗な線を引くことも可能です。またはコーヒーカップを乗せるソーサーの、底にあたる部分にのみ線をひく、といったことも理論上はできます。あるいは四角形のお皿のふちに線を引くことも。
さらに、引いた線を境目に内側と外側の陶器の色を変えるということもできます。例えば白い線を境に、内側は赤、外側は赤いマグカップを作れるということです。
このように、口線加工はただ縁取りをするだけの技術ではありません。やり方によっては、様々なデザインを表現することができます。
ただし、綺麗に線を引くには確かな職人の技術が必要となります。プリント印刷での絵付だけを請け負っている制作会社では、こうしたアレンジはおろか口線加工自体を請け負っていません。
自分だけのこだわりのデザインを再現したい方は、陶器の専門会社に問い合わせてみるのがおすすめです。職人のいる陶器会社なら、オリジナルのデザインを柔軟に再現してくれるでしょう。
まとめ
陶器の口線加工についてご紹介しました。口線加工は職人の技術が求められる、伝統的な技法です。そして手作業で行なう技法だからこそ、バリエーション豊かなデザインを表現することができます。
他で目にしたことがないような、唯一無二の陶器制作をしたいという方におすすめの技法です。
ファースト・スティングではそんな口線加工を用いた陶器制作に対応しています。ご自身のオリジナルデザインをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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