食に安全な印刷とは?安心・安全にもこだわったオリジナル陶器の制作方法
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マグカップをはじめ様々な陶磁器製品・ガラス製品をご用意しています。
私たちの生活、そして食事に欠かすことのできない「陶器」。
マグカップやプレートなど、あらゆるシーンで私たちは陶器を使用します。
そんな身近な存在である陶器ですが、食の安全という点においてはその制作に非常に厳しい基準が設けられているのが特徴です。
食器として利用する陶器には、盛り付けた料理や中に入れた飲み物を口にしても問題ないレベルの高い安全性が求められます。そのため一般にはあまり知られていませんが、陶器には食べ物と同様の「食品衛生法」が適用されています。
このように、陶器の制作には細心の注意が必要といえます。私たちが普段から何気なく使う陶器の安全性は、こうした影ながらの努力によって保証されているのです。
そこで今回は、「安心・安全な陶器を作るためのポイント」について詳しくご紹介していきます。
食の安全にもこだわったオリジナルのマグカップやプレートを作る方法
陶器にはあらゆる色や形状のものがあります。コーヒーを入れるマグカップや、スイーツを乗せるプレート。食べ物や飲み物を入れる陶器であれば、これら全てに安全性が求められます。
では安全な陶器を作るには、どういった注意が必要なのでしょうか。安全性の高い陶器づくりのポイントをご説明していきます。
安全にこだわった印刷とは?
まず、「安全にこだわった印刷」とはどのようなものなのでしょうか。
前提として陶器は食べ物をよそい、口をつける可能性のあるものです。そのため陶器には食品と同等の安全性が求められます。
陶器の原材料は粉砕した石や粘土で、健康を害するリスクはありません。しかし本体に色をつけたり、絵付けを行う過程で、無機顔料を使用します。
陶器の制作において最も気を付けるべき成分は、無機顔料に含まれる「鉛(なまり)」、そして「カドミウム」という成分です。
鉛やカドミウムは陶器に必ず含まれているわけではなく、ビビッドで鮮やかなカラーを出したい時などにしばしば使用されます。
いずれも一定量を摂取すると、鉛は鉛中毒、カドミウムは腎臓疾患や関節障害・貧血などといった健康被害を発生する恐れがあるのです。
ちなみにこれらの成分が、陶器に含有されていること自体を、食品衛生法自体で問題視している訳ではありません。使用しているうちに鉛やカドミウムが溶け出し、それを食品と共に摂取してしまうリスクが問題とされています。
つまり安全な陶器とは、鉛とカドミウムの「溶出量」が安全なレベルに収まっているもののことを指します。また安全値に収めるだけでなく、健康に全く影響がないレベルまで溶出量を抑えることが、安全へのこだわりといえます。
鉛・カドミウムの基準値は法律で定められている
人体にとって有害な鉛とカドミウム。
陶器におけるこれらの溶出量は、国の規定した基準値の範囲内に収める必要があります。この、国の規定した基準値が示されている法律こそが「食品衛生法」です。
食品衛生法は、食品だけでなく「飲食にまつわる全てのリスク」を回避するために作られたもの。そのため、食品に対してだけでなく食器や容器、おもちゃにまで成分規定を設けています。
陶器の場合は健康被害が懸念される成分として、鉛とカドミウムの溶出量を検査することが義務付けられているのです。
形状によっても異なる基準値
陶器の形状や大きさは様々です。そのため食品衛生法では、陶器の形状に応じてそれぞれ鉛とカドミウムの基準値を設けています。
溶出量を検査するにあたり、陶器は大きく4種類の区分に分かれます。
陶器の区分と、基準値は以下の表の通りです。
陶器は深さと容量によって基準値が分かれています。例えば深さがほとんどなく平らなお皿の場合は、区分Ⅰに分類されます。
一方、深さが2.5cm以上あり容量が1.1ℓ未満のマグカップなどは区分Ⅱです。このように、形状や容量に応じて鉛とカドミウムの基準値が異なります。
安全性を検査する「食品衛生検査」
日本の食品衛生法は、非常に厳しい基準で作られています。その基準の高さは食品衛生法に基づく検査、「食品衛生検査」を見れば分かります。
陶器に含まれる鉛やカドミウムは、酸性の成分に触れると溶け出す傾向があります。つまりお酢などの成分に反応して溶け出すのです。
陶器の食品衛生検査では、まず陶器の中に酢酸を満たします。そして常温で放置すること24時間。その後、陶器の中に溶け出した鉛とカドミウムの量を測定します。
このように食品衛生検査では、最も多くの鉛とカドミウムが溶出する条件下で検査を行うのが特徴です。
実際に陶器を使う上でただパンを乗せたり、コーヒーを注いたりするだけなら鉛とカドミウムはほとんど溶出しません。そのためほとんどの使用条件下において、溶出する鉛とカドミウムは食品衛生検査の結果よりも少ない数値になると考えられます。
食品衛生検査では念には念を入れて、厳しい品質基準を設けているのです。
安全なオリジナルの陶器を制作するために
レストランやカフェなどといった飲食店では、オリジナルの陶器を作って使用するということも珍しくありません。オリジナル陶器はお店の雰囲気やイメージ作り大きな役割を果たしてくれます。しかしオリジナル陶器の制作には、安全性に十分留意して制作する必要があります。
当然、食品衛生法の基準上、問題の無い品質に仕上げるためにはあらかじめ食品衛生検査を行います。ではどのような陶器で、どれだけの鉛やカドミウムが検出されるのでしょうか。
ここからは検査の一例と、より安全な陶器を制作するための方法についてご紹介していきます。
マグカップやプレート本体の色は問題ない
基本的に陶器を制作する上で注意すべき点は本体のカラーでなく、転写された絵柄の部分です。
とはいえ、本体に塗られる釉薬という材料にも、カドミウムや鉛は含まれている場合があります。しかし国産で、かつ最適な温度で焼き上げられた陶器であれば、本体から基準値以上の鉛やカドミウムが検出されることはほぼありません。
釉薬を塗った状態の陶器は、「本焼き」という工程に入ります。陶器を焼き上げる温度は1,200℃以上の高温です。その際、熱で溶けて液状化したガラス成分の中にカドミウムや鉛が溶け混みます。
そして冷えればガラス成分は固まり、鉛やカドミウムを外側からカバーしてくれるのです。そのため高温で焼き上げ、なおかつ釉薬に適した調合が出来てさえいれば、鉛やカドミウムの溶出はほとんどないといえます。
赤や黄色といったプリントカラーの時は注意が必要
一方、赤や黄色など鮮やかな色をプリントする際は注意が必要です。ちなみに黒や白、落ち着いたブルーやブラウンなどといったカラーには、ほとんど鉛やカドミウムが含まれておらず、これらが溶け出す心配はまずありません。
上絵付とよばれる工程で使われる顔料の中では、赤やオレンジ、黄色などの色にはカドミウムが含まれます。
その検証として、直径20cmのプレート全面にオレンジ色の転写絵付を施した食器(上の写真左)を検査しました。
すると食品衛生法の基準値が0.5µg/㎖未満なのに対し、なんと2.5µg/㎖ものカドミウムが検出されたのです。真っ赤な色の場合(上の写真右)は、0.17µg/㎖という結果でした。
これを見る限り鮮やかな色の装飾をする際には、細心の注意が必要であるということが分かります。当然ながら鉛とカドミウムの溶出基準値を超えた陶器は、健康被害を及ぼすリスクがあるといえます。食品をのせる食器としては、とても販売することが出来ません。
鉛・カドミウムが出やすい色でも、印刷範囲が狭ければOK
では印刷の範囲を狭めたらどうなるでしょうか。
次に白い本体にワンポイント「TOUKI」と記載したプレートで再度検査を行いました。
赤いロゴの場合(上の写真右)はカドミウムのみが0.02µg/㎖という結果に。そしてオレンジ(上の写真左)も同じく、カドミウムのみが0.14µg/㎖という結果になりました。
ちなみに食品衛生法で定められている基準値は0.5µg/㎖未満です。いずれもワンポイントのロゴであれば、基準値を超えることはありませんでした。
しかしプレートを使い込めば使い込むほど、鉛やカドミウムが少しずつ溶け出すリスクがあります。小さなロゴの印刷で食品衛生法の溶出基準値を満たしていても、こうしたリスクはゼロではありません。
万が一基準値を越えてしまいそうな時には「フラッキス」を使用
赤やオレンジなどといったカラーは鉛やカドミウムの含有量が高く、食品衛生法の基準値にも触れやすいことが分かりました。
では安全な陶器を作るためには、赤やオレンジは使えないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
実は赤やオレンジを安全に使用できる方法があります。それは「フラッキス」を利用する、というものです。フラッキスはほぼ100%の成分をガラスが占めている、いわばコーティング剤です。
このフラッキスを製造過程の最後に施すことにより、鉛やカドミウムが溶け出すのを防いでくれます。釉薬から有害物質が検出されないのと同じ原理で、鉛やカドミウムをガラスの中に閉じ込めるのです。
ちなみにガラスの細かい粉のことを「フリット」と呼び、フラッキスはフリットを用いたコーティング剤のことを指します。フラッキスで陶器をコーティングすると、耐酸効果が得られます。酸で溶け出しやすい鉛やカドミウムが溶出するのを抑える効果があるのです。
実際に、このフラッキスの効果を検証しました。
使用したのは先ほどの検証で食品衛生法の基準値を大きく上回った、全面にオレンジの塗料を塗ったプレート。
このお皿にフラッキスを塗り、再度検査にかけました。すると2.5µg/㎖もあったカドミウムの検出量が、0.18µg/㎖まで抑えられたのです。大幅な数値ダウンといえます。
食品衛生法での基準値は0.5µg/㎖未満。つまり基準値内に数値を収めることが出来ました。
また、0.02µg/㎖のカドミウムが検出されていた赤いロゴ入りのプレートにフラッキスを施しました。するとなんと、カドミウムは検出されなかったのです。
これはつまり微量の成分であれば、フラッキスの耐酸効果により0µg/㎖にすることが出来ることを示しています。
このフラッキスを利用すれば、色を制限されることなくオリジナルの陶器を作ることが可能だということが検証できました。
まとめ
陶器の安全性についてご紹介しました。
意外と知られていませんが、陶器の制作には食品衛生法という高い基準が設けられています。ファーストスティングではそれをクリアするだけでなく、より安全で長く使える陶器の制作を目指しています。
例えば今回ご紹介した「フラッキスによる耐酸」という方法で陶器をコーティングすれば、より高い安全性が実現出来るでしょう。
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